MOODOOISM

佐藤薫 “MOODOOISM”と“LIVING MAD”、アナザー・ワールドの形成

 アマリリス【改】、チルドレンクーデター、ニウバイル……ここに集まったメンツを見てふと気づいた人も少なくないのではないだろうか。それはまるで『A Night Of “MOODOOISM”』といったところ。そう、2011年にリリースされたオムニバス・アルバム『MOODOOISM』に参加していた3組が奇しくもそろい踏みすることになったのである。
『MOODOOISM』とは、主に80年代~90年代、ポスト・パンク期の日本に活動していた個性豊かな精鋭たちを集めた3枚組。この時代、関西と関東を行き来しながら暗躍していたEP-4の佐藤薫の過去のプロデュース・ワークを集めたものとして、ちょうど佐藤が復活してきたタイミングに、自身の監修、選曲によって編纂された。山崎春美のタコや、現在、朝の連続テレビ小説『まれ』で役者として好演しているダンサーの田中泯と佐藤の即興共演の音源なども含まれているのが面白く、当時の佐藤薫のハイブリッドな感覚、先見性が感じ取れるのが本作の何よりの魅力だ。
だが、この3枚組を支えているのは、ネーム・ヴァリューなどに屈しない、でもエッジーなことには常に鼻をクンクンさせていた、当時のファナティックな若者たちによるあまりにも無防備で自由な表現力である。例えばアマリリス(当時)、チルドレンクーデター、ニウバイルといった連中。日本のニュー・ウェイヴの黎明期において、獰猛な獣や巨大な怪物のように、時代に大胆に噛み付き、世界をたちまちのうちに震撼させるような目に見えて喝采ものの活躍をしてきたヒーロー、ヒロインたちではなく、どちらかというと、夜行性の昆虫のように、地面の下でモゾモゾと蠢きながら、気づいたら地下に新たな価値観と社会を作り上げてきた、そんなある意味独創的でポリティカルな存在だ。その姿は決して大きくはない。だが、猛獣の一発の噛み付きよりも、夜行性の昆虫たちによるアナザー・ワールドの形成の提示こそが、時間をかけて時代を覆す最大の武器となりうることを私たちは知っている。そして、そこに過剰な重々しさはなく、どこかしなやかで軽やかでユーモラスでさえあることも。『MOODOOISM』というコンピレーション・アルバムは、いみじくも佐藤のそんな哲学=ディレッタンティズムを再定義したものでもあった。
そして、彼ら夜行性の昆虫たちが孵化してから30年…いや、先陣を切った者にとっては35年、40年近くになるかもしれないが、ここに“30年目のMOODOOISM”が実現することとなった。あるいは、東西に住み別れているこの3組が一堂に会するのは今回が初めてかもしれない。30年かけて築いてきたMOODOOISMなるアナザー・ワールドにおいて、果たして住民たちである彼らがどんなパフォーマンスを見せてくれるのか。この日の訪れを予見していたかのような“創設者”の佐藤薫も、アマリリス【改】の一員として登場、佐藤とはEP-4本隊の同士でもある鈴木創士もチルドレンクーデターのゲストとして参加することになっている。 ところで、3年前に東京・代官山で復活後初のバンド編成のライヴを行い、2年前には結成の地である京都でもその狼煙をあげたEP-4本隊は、現在再び沈黙を続けている。だが、今年は“EP-4 5・21”ならぬ、“MOODOOISM 6・6”がある。時代は今なお回転し続けていることを当日現場でぜひ体感してほしい。瞳孔を開け! 鼓膜を引きちぎれ! living madという名の叡智はそこに生きるのみだ。

岡村詩野

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